(アスパス)
※アルベルとパスカルが結婚している前提の話です 雨の日のお迎え 雨が降るからこれを持っていきなさい、とシェリアが駆け足で玄関にやって来て傘を渡してくれた
なにも駆け足でこなくてもーと笑うと貴女なら雨が降るとわかっていてももって行かないでしょう!とお母さんのように叱ってくれた
逃げ出すようにお礼を言いながら玄関を飛び出る。もうすぐ魔物退治からアスベルが帰ってくるというのでお迎えに行くと、痺れを切らしたパスカルが言い出したのだ
ソフィはリチャードのところへと遊びに行っている。シェリアは夕飯の準備をしてまっているからとパスカルを一人で見送った
外にでて数分でぱたぱたと雨が降り始める。街を歩く人々は傘を開いたり、もっていない人は走り目的地へと急ぐ
もうすっかりと見慣れた町並みも雨の日はどこか特別に見える。そんな人々を見ながらパスカルもシェリアに感謝しながら傘を開いた
ここにきてソフィと一緒に選んだ赤と白の傘。パスカルらしいとソフィがおすすめしてくれたのだが、パスカルも気に入っている
せっかくだ、と少し遠回りをする。途中雨合羽や傘をもった子供達が雨を楽しんでいるのを見かけ微笑ましく見つめているとその先に紫陽花が咲いていた
紫陽花を観察していると街の鐘が鳴り響く、もうそろそろ夕飯時だ
その鐘の音を聞くともうすぐアスベルが帰って来るような気がして、逸る胸を押さえながら、走り出したくなるのを我慢しながらゆっくり、ゆっくりと歩き出した
しかしあてははずれたのかまだ帰ってきていないようだ
「なーんだ。まだかー」
道中喋り相手がいなかったのもそうだが痺れを切らしたように声をここで漏らす
ここでずっと待っているとシェリアにもアスベルにも怒られるかもしれない、身体が冷えてしまうから
とおもいつつも街の入り口から動けずにいる。ここにいれば一番にアスベルに会えるから
いままでなら街を飛び出て迎えにいったものだが以前怒られてしまった
懐かしいなぁ、と思い出に耽っていると足元を蛙がやってきた
「何?あたしの話し相手にでもなってくれんの?」
クスクスと笑いながら蛙を眺めるがすぐに跳ねて行ってしまう
「行っちゃったー。あーあ、早く帰ってこないかなぁ・・」
おもわず濡れることも構わず傘から空を見る
灰色の空は泣きじゃくっていた
「・・・」
降ってくる一粒一粒の雨がまるで宝石のように見えてキラキラしていた
おまわずぼーっと子供のように見入っていると「パスカル!!!」と驚いたような怒っているような声が聞こえた
空から視線を声のするほうへとむける、そこには待ちに待っていた彼がいた
「おーアスベルおかえり~」
「おーアルベルおかえり~じゃない!なにしてるんだ!」
「え、むかえにきたんだけど?」
「ああそれはありがとう。・・じゃない!びしょ濡れじゃないか!」
「え?・・・あ、ほんとだ」
「ほんとだじゃない!いったいいつからいたんだ!っていうかなんでここまで濡れて・・」
「あーあーごめんごめん。ちょっと空みてたのー。そんなに外でてないって」
「そんなに出ていなくても濡れたら一緒だろ!もう!・・・風邪をひいたらどうするんだ」
帰ってきて早々怒鳴りつけながらも最後は労わるように言えば雨合羽を脱ぐと手早く上着をパスカルへとかけてやった
「わーわざわざありがとー」
「当たり前だ。お前も心配だが・・お腹の子になにかあったらどうするんだ」
「心配性だねぇ、あたしとアスベルの子供なら大丈夫っしょ」
「あのなぁ・・。まあいい、帰るか」
「うん。じゃあ傘持ってねー」
「ああ」
自然と二人で相合傘をする。元々傘はひとつしかもってこなかった、これがいつしか当たり前になっていた
アスベルが傘を持つといままで目の上にあった傘がもっと高い位置に居る。それを見て何故かアスベルがやっと帰ってきたような気がして思わず笑ってしまう
「なんだ?どうかしたか?」
「ううん、なんでもない。ところでーまだおかえりの返事聞いてないけど?」
「え?・・・あ!ただいま!」
「うんおかえりアスベル!今日もシェリアのご飯が待ってるよー!いそいで帰ろう!」
「はいはいわかったから傘より先に行くな。また濡れるぞ」
「じゃあがんばってアスベルがついてきよー!」
「俺は疲れているんだぞー」
「疲れている人はさっきみたいに怒鳴りません~」
「あれは別だ!それにパスカルを見たら疲れが吹っ飛んだ」
「なんだ疲れてないじゃん!じゃあ行こう!」
「もーああいえばこう言うんだからなぁ・・。たまには二人でゆっくり歩こう」
「ふふ、アスベルがそういうなら甘えさせたげる!」
腕をそっとアスベルに絡め上目遣いでウインクをすればアスベルは恥ずかしそうに頬を染める
「雨ばっかやだねー」
「梅雨だからな」
「そーだ!梅雨をふっとばしちゃう機械でもつくろっか!」
「そうなると水不足で困るだろー。却下」
「ええー!あたしゆーうつな日々ばっかりだよー!」
「我慢しろ」
「じゃあ梅雨の間はアスベルがずっと傍にいてね!それなら我慢できる!」
「こまったお姫様だな・・でもしばらくは街にいれるんだ」
「ほんと!?よかったね~ずっとパパがいてくれるって~」
開いているほうの手でパスカルは随分と大きくなった腹を撫でながら語りかける。その姿に胸が幸せできゅう、となるのをアスベルは感じた
じっと見つめているとパスカルも気づいたのかこちらを見る
「なぁにそんなやらしい目で見てさぁ」
「うぇ!?そんな目してた!?」
「してたしてた」
「ぜ、絶対うそだ!俺そんなやましいこと考えてないぞ!?」
「むっつりアスベルだからな~どうだろ~?」
「むっつりっていうなー!」
雨の音の中に夫婦の会話が響く
梅雨はまだまだ続きそうだ
(パスカル。お前も、俺たちの子供も、絶対に俺が守るからな!)(あはは、それ何度目?でも今日も雨から私を守ってくれたよね!さっすが私の騎士様だねぇ~!大好きー!)(なっ!!!) 終
+*+*+あとがき+*+*+
お久しぶりです夏神龍です
久しぶりすぎる更新はアスパスです。しかも夫婦編です
テイフェスの情報眺めたりしてたらテイルズが恋しくなり久しぶりに自分の作品を読み返しておりました
文章力がないうんぬんより、ああやっぱり自分はアスパスが好きだな、と伝わってくる作品だなと自画自賛じゃないですが思っていました
マイナー街道ですがやっぱりアスパス大好きです!そんなアスパス愛を詰めさせていただきました
うちのサイトのアスパスも糖度甘めのつもりで今回も甘々を目指したのですが。ふと「夫婦だったら」と考えた瞬間書きたい欲が止まらなくなり筆を(キーボードを)とりました(?)(打ちました?
いつもとかわらず、でもどこか夫婦らしさがでていたらいいなー
アスパスフォーエバー!
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